日本小児血液・がん学会雑誌
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日韓ジョイントシンポジウム: 肝腫瘍,腎腫瘍
日本における小児肝腫瘍に対する臨床試験の現状
井田 孔明
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2018 年 55 巻 5 号 p. 406-411

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抄録

1989年6月,小児肝悪性腫瘍の治療成績の向上を目的として,日本小児肝癌スタディグループ(JPLT)が設立されたのが,日本における多施設共同試験の始まりである.1991年から1999年に施行されたJPLT-1臨床試験では,術前術後にCITA療法が行われ,その有効性が検証された.続く1999年から2010年に施行されたJPLT-2臨床試験においては,腫瘍の広がりを評価するPRETEXT(pre-treatment extent of disease grouping system)が導入され,CITAよりも強力なITEC療法および転移例に対する大量化学療法の有効性が検証された.これらの臨床試験を通じ,日本の肝芽腫の治療成績は83.3%(5yr-OS),68.0%(5yr-EFS)と向上した.現在行われているJPLT-3臨床試験では,新しく標準リスク群,中間リスク群,高リスク群に層別化された治療が行われ,中央画像診断システムや肝移植コンサルテーションシステムの導入によってさらなる治療成績の向上を目指している.また,肝腫瘍の領域においても国際共同研究の動きが活発化しており,日本および諸外国の研究グループ(SIOPEL, COG)による国際共同臨床試験PHITT(Paediatric Hepatic International Tumour Trial)の準備が進められている.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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