日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
Print ISSN : 2187-011X
ISSN-L : 2187-011X
症例報告
腫瘍破裂により心タンポナーデをきたした縦隔成熟奇形腫の1小児例
中目 和彦山田 和歌川野 孝文町頭 成郎上野 健太郎西川 拓朗田邊 貴幸向井 基義岡 孝子岡本 康裕加治 建河野 嘉文家入 里志
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 55 巻 5 号 p. 427-431

詳細
抄録

今回,腫瘍破裂により心タンポナーデに至った縦隔成熟奇形腫の症例を経験したので報告する.症例は8歳,女児.肩痛,血痰を主訴に受診し,CT検査にて左前縦隔奇形腫が疑われた.AFPとHCGは正常であった.初診時より12日後に手術が予定されたが,術前に全身倦怠感,発熱を認め,CRP 9.68 mg/dLと高値を認めた.造影CT検査にて腫瘍増大と心嚢液貯留を認め,その後心嚢液貯留は増悪し,呼吸困難が出現した.緊急の心嚢穿刺・ドレナージが施行され,血性の心嚢液を認めた.心嚢液貯留は持続し,貧血も進行したため緊急の開胸腫瘍摘出術を施行した.病理組織診断は成熟奇形腫で,術後に心嚢液貯留は改善した.良性縦隔成熟奇形腫であっても腫瘍増大に伴う周囲臓器への破裂により重篤な合併症をきたす可能性があり,正確な術前評価と注意深い病態変化の観察が必要である.

著者関連情報
© 2018 日本小児血液・がん学会
前の記事 次の記事
feedback
Top