2018 年 55 巻 5 号 p. 427-431
今回,腫瘍破裂により心タンポナーデに至った縦隔成熟奇形腫の症例を経験したので報告する.症例は8歳,女児.肩痛,血痰を主訴に受診し,CT検査にて左前縦隔奇形腫が疑われた.AFPとHCGは正常であった.初診時より12日後に手術が予定されたが,術前に全身倦怠感,発熱を認め,CRP 9.68 mg/dLと高値を認めた.造影CT検査にて腫瘍増大と心嚢液貯留を認め,その後心嚢液貯留は増悪し,呼吸困難が出現した.緊急の心嚢穿刺・ドレナージが施行され,血性の心嚢液を認めた.心嚢液貯留は持続し,貧血も進行したため緊急の開胸腫瘍摘出術を施行した.病理組織診断は成熟奇形腫で,術後に心嚢液貯留は改善した.良性縦隔成熟奇形腫であっても腫瘍増大に伴う周囲臓器への破裂により重篤な合併症をきたす可能性があり,正確な術前評価と注意深い病態変化の観察が必要である.