2019 年 56 巻 1 号 p. 1-7
骨髄異形成症候群(MDS)は造血幹細胞に何らかの遺伝子異常が生じることによって血液細胞の正常な分化が障害され,細胞の形態学的異常(異形成)と血球減少を呈する疾患群の総称である.診断時年齢中央値は70歳以上と高齢者に多く小児ではまれな疾患である.発症機序として成人では加齢に伴って生じる造血細胞内の遺伝子異常の関与が示唆されているが,小児においては先天性素因について注目が集まっている.Fanconi貧血などの遺伝性骨髄不全症候群に加えて,最近ではGATA2遺伝子などの生殖細胞系列変異が骨髄性腫瘍の発症に関与していることが明らかになってきており,2017年に改訂されたWHO分類では“myeloid neoplasms with germ line predisposition”という項目が追加された.MDSを診断する際には他の血球減少症の除外が必須である.異形成はMDSを特徴づける所見ではあるが,MDS以外の造血器疾患のみならず感染症や先天性免疫不全などでも認められるため「異形成=MDS」と短絡的に考えるべきではない.小児MDSの治療方針は芽球の多寡によって決定する.芽球増加を伴わないMDSでは再生不良性貧血との鑑別が,芽球増加を伴うMDSは急性骨髄性白血病との鑑別がそれぞれ重要であり,診断には骨髄生検が必須である.今後は分子生物学的所見なども勘案した再分類が必要であろう.