日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム4: 小児の血栓症
造血細胞移植後TMAの病態と治療
齋藤 敦郎
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2019 年 56 巻 1 号 p. 8-13

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抄録

血栓性微小血管症(TMA)は,細小血管障害性溶血性貧血,破壊性血小板減少,血小板血栓による臓器障害を主徴とする多彩な病態をする症候群である.血管の恒常性は,血管内皮や血小板–凝固線溶経路,補体経路など多彩なメカニズムのバランスにより維持されており,TMAはそれらの破綻が契機となって臓器障害を来す.造血幹細胞移植後は,抗がん剤や放射線照射による移植前処置毒性や免疫抑制剤,感染症,急性移植片対宿主病(GVHD)などの様々な要因で血管内皮細胞が障害を受けTMAを発症しうる.臓器障害を伴うTMAの予後は不良であり移植後の重大な合併症の一つである.TMAの一型である非典型溶血性尿素症症候群(aHUS)については補体制御機構の破綻がTMAの原因であることは明らかとなり,本邦においてC5モノクローナル抗体製剤(エクリズマブ)が保険認可されている.近年,造血細胞移植後TMAの一部にaHUSと同様に補体制御異常の関連が言われ始めている.造血細胞移植後TMAについて,定義,病態,症状,診断に加え治療について概説する.

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© 2019 日本小児血液・がん学会
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