日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム3: 形態学的,分子生物学的アプローチによる小児固形腫瘍の病理診断
小児軟部腫瘍の病理診断
孝橋 賢一山元 英崇山田 裕一木下 伊寿美小田 義直
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2019 年 56 巻 2 号 p. 126-130

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抄録

小児軟部腫瘍は稀なため,病理医・臨床医ともにその診断や治療法の選択に難渋することも少なくない.そのため,病理組織診断の概念や枠組み,それを取り巻く分子生物学的背景についてよく理解しておくことが必要である.現在広く用いられているWHO分類は細胞の分化に基づく組織分類であり,12の項目と3つの悪性度により分類されている.また,解析系の発達により様々な遺伝子異常が判明しており,組織分類に反映されている.しかし,悪性度が異なる腫瘍が同一のキメラ遺伝子を有する例や腫瘍特異的と考えられた遺伝子異常がその他の腫瘍群でも見つかるなど,すべての症例で1対1対応しているわけではない.分子生物学的解析についても,検体採取や解析上のエラーが一定の割合で生じうる.病理診断は時間との戦いでもあるため,解析の妥当性について長時間の検討を許されず,日々の精度管理が重要である.したがって現状では,組織診断を基本線として,分子生物学的解析結果によりエビデンスを補強するというスタイルが大切となる.また,現在小児腫瘍はほぼ全例が中央病理診断されているが,標本の回覧や各施設で行われなかった解析を実施するなど,時間がかかってしまうことも多い.速やかな治療のためには,臨床医が自施設でどの程度の病理学的分子生物学的検討が実施できるかを理解したうえで,どの範囲まで求めるかを病理医と検討しておくことが重要となる.

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