日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム3: 形態学的,分子生物学的アプローチによる小児固形腫瘍の病理診断
ユーイング肉腫とユーイング様肉腫
吉田 朗彦
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2019 年 56 巻 2 号 p. 131-135

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抄録

こんにち,ユーイング肉腫はEWSR1/FUS-ETS融合を有する遺伝子的に純粋なグループとして狭く定義され,非典型的な遺伝子異常や形質を示す小円形細胞肉腫(いわゆるユーイング様肉腫)については,ユーイング肉腫とは異なる疾患として理解されている.後者には,①EWSR1-nonETS融合遺伝子を有する肉腫,②CIC肉腫,③BCOR関連肉腫の3群が大きく区別される.EWSR1-nonETS融合を有する肉腫については,報告数が少なく,疾患単位として確立しつつあるのは,EWSR1-NFATC2肉腫とEWSR1-PAZ1肉腫くらいであり,その臨床的振舞いについてもまだよくわかっていない.CIC肉腫は比較的頻度が高く,大部分はCIC-DUX4融合を有し,特徴的な組織像,WT1やETV4免疫染色陽性像,およびきわめて予後不良な臨床像など,特異な腫瘍型であることが明白である.BCOR関連肉腫にはBCOR-CCNB3,BCOR variant fusion,BCOR-ITDといった遺伝子異常を伴う複数の肉腫が含まれる,それぞれ違った臨床像を呈するが,組織像はいずれも類似しており,BCOR免疫染色の陽性所見も共通している.ユーイング様肉腫と総称される腫瘍群はこのように内的に不均一で,グループとして取り扱うことの合理性には疑問があり,少なくとも上記3群についてはそれぞれ特定して語られることが望ましい.

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© 2019 日本小児血液・がん学会
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