日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム2: 小児がん領域におけるゲノム医療
リー・フラウメニ症候群に対するがんサーベイランス
熊本 忠史
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2019 年 56 巻 2 号 p. 118-125

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抄録

がんゲノム医療の普及に伴い,遺伝性腫瘍と診断される患者の増加が見込まれる.しかし,本邦では遺伝性腫瘍患者,特に小児では最も高頻度に診断されることが予測されるリー・フラウメニ症候群(Li-Fraumeni syndrome, LFS)に対するがんサーベイランスプログラムなどの診療体制が未整備である.本稿では海外で行われているLFSがんサーベイランスプログラムのうち,すでに論文化された6件と,がんサーベイランスで頻用される全身MRIのメタアナリシスの論文をレビューすることにより,本邦におけるLFSがんサーベイランスの実行可能性について考察する.海外ではToronto/Utah/CHLA LFS studyが行っている「トロント・プロトコール」の経過報告が肯定的に捉えられ,これを元に6か国で12のがんサーベイランスプログラムが進行している.全身MRIの陽性率は高く,さらなる技術開発を要するが,がん検出率は7%と高く,また,がんの早期発見,早期治療によりLFS患者の生命予後を改善しうる可能性があり,本邦でもLFS患者に対するがんサーベイランス研究を進めることが望まれる.

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© 2019 日本小児血液・がん学会
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