日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム4: 放射線治療: QOLを考慮した局所治療
小児がんに対する吸収性スペーサー留置を併用した粒子線治療
佐々木 良平出水 祐介岩田 宏満亀井 美智文野 誠久赤坂 浩亮王 天縁妹尾 悟史犬伏 祥子宮脇 大輔吉田 賢史小松 昇平福本 巧
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2019 年 56 巻 2 号 p. 148-152

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抄録

粒子線治療は,外科的治療が困難な難治がんに対しても有効な治療選択肢であるが,腫瘍と腸管などの正常組織が近接する症例では根治的線量を照射することが困難である.我々は,独自開発した生体適合性材料である吸収性PGA(ポリグルコール酸)手術糸を不織布に加工した体内吸収性PGAスペーサーを外科的に留置し,粒子線治療の期間にのみ腫瘍と正常組織の間隙を作り,スペーサー留置なしでは根治的治療が困難な症例に対して,根治的粒子線治療を可能にする方法を開発した.小児がんに対して,陽子線治療が保険適応されたことを受け,小児科医,小児外科医と研究グループを組織し,吸収性スペーサーと陽子線治療を目的とした小児部会(放射線腫瘍科,小児科,小児外科間の連携)を設置し,小児がんに対してオールジャパン体制での研究連携が可能となる拠点の選定をしつつ,小児がんに対してスペーサー留置と陽子線治療の前向き試験を検討し,妊孕性の保持や被曝を低減する照射法や手術法を開発中である.今後はPGA吸収性スペーサーを更に改良し,より癒着が少なく,より低侵襲な生体適合性材料を用いた次世代・吸収性スペーサーに関しても試作を進めているが,これまでの開発の経緯を踏まえ,PGA吸収性スペーサーの今後の方向性を報告する.

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© 2019 日本小児血液・がん学会
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