2019 年 56 巻 2 号 p. 159-162
3q21と3q26との間の逆位や転座を伴う急性骨髄性白血病は,極めて予後不良であることが知られている.近年,発症機構の解明が進み,3q21に存在するGATA2遺伝子エンハンサー(GATA2-distal hematopoietic enhancer: G2DHE)が,3q26上のEVI1遺伝子に近接し,EVI1遺伝子の発現を活性化することが白血病発症の原因であることが明らかにされた.EVI1遺伝子によるG2DHEの獲得は,同時に片アリルのGATA2遺伝子のG2DHEの欠失をもたらし,GATA2遺伝子の発現を低下させる.GATA2遺伝子のヘテロ欠失は骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病との関連が知られていることから,筆者らはG2DHEによるEVI1高発現を再現するモデルマウスである3q21q26マウスとGATA2遺伝子ヘテロ欠失マウスを用いて,白血病発症におけるGATA2の発現低下の貢献を検証した.3q21q26::Gata2+/−マウスは3q21q26マウスと比べて有意に早く白血病を発症した.3q21q26::Gata2+/−マウスの白血病細胞は骨髄系細胞への分化が抑制され,増殖能が亢進していた.このことから,3番染色体長腕の逆位・転座を伴う急性骨髄性白血病においてGATA2ハプロ不全は分化の障害と増殖能の亢進をもたらし白血病発症を促進することが明らかとなった.