日本小児血液・がん学会雑誌
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英語口演4: 血液基礎
小児T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)のDNAメチル化による分類と変異・発現・分化段階・予後との関連性
木村 俊介滝田 順子
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2019 年 56 巻 3 号 p. 325-330

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抄録

次世代シーケンサーの発展に伴いT細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)の分子生物学的特徴が明らかになり,DNAメチル化を含むエピゲノム領域の研究が急速に広まっている.本研究では79例の小児T-ALLに対してEPICメチル化アレイを用いたDNAメチル化解析を行い,DNAメチル化プロファイルによって4群(Cluster 1–4)に分類されることを明らかにした.Cluster 1はTAL1に関連した群であり,ALDH1A2などのTAL1の下流遺伝子が高発現であるlate corticalの分化段階の一群であると考えられた.Cluster 2はCluster 1と真逆のメチル化プロファイルを示し,DEPTORの高発現によるPI3K-AKTパスウェイの活性化が特徴的であった.細胞表面抗原ではCD4/8 double negativeであり,最も幼弱な分化段階の一群と考えられた.Cluster 3は高メチル化が特徴的であり,JAK-STAT関連やエピゲノム関連の遺伝子異常を多く有していた.症例数は少ないものの11例全例が生存していた.Cluster 4はSPI1に関連した群で低メチル化のプロファイルを示した.SPI1関連だけでなく細胞増殖やRAS/MAP関連の遺伝子が高発現となっていた.この群には極めて不良なサブタイプであるSPI1融合遺伝子を有する症例が全例含まれていた.この群に含まれたSPI1融合遺伝子を有さない2症例も死亡しており,SPI1融合遺伝子の有無に関わらずCluster 4は極めて予後不良であることも明らかとなった.これらのゲノム・エピゲノム情報を基盤としたさらなる検討が,今後の治療層別化や新規治療の開発に期待される.

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© 2019 日本小児血液・がん学会
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