2019 年 56 巻 5 号 p. 393-397
近年Onco-Cardiologyが注目されている.小児のがん治療においても治療に伴う循環器系の障害は重要な問題の一つである.この循環器系の障害は遠隔期にも生じ,進行性である.心不全のステージ分類では心毒性を有する薬剤の使用歴はステージAの心不全と定義される.症状を有する心不全ステージCに至る前に増悪を見つけるために,ステージB(器質的異常を認めるが症状がない段階)への移行をつかまえることが重要である.B-type natriuretic peptideあるいはN末端pro B-type natriuretic peptideの上昇は心臓における代償機転の破綻を意味し,これらの上昇を目安に循環器科医が積極的な介入を始めることはフォローアップ戦略の一つであると考える.症状を有する心不全においては症状を改善するための循環動態改善薬(カテコラミンやフロセミドなど)が必要となる.これらの薬剤の漫然とした使用は予後を悪くする可能性があるため,最少量を最短期間の使用にとどめることが重要である.症状を認めない心不全の段階では予後改善薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬,ベータ遮断薬)が投与される.成人ではアントラサイクリン治療後の心不全において早期に心筋障害を発見しこれらの薬剤で迅速に治療を行うことにより心機能を回復しうるという報告もあるが,小児においては未だ十分なデータに乏しい.今後,小児における大規模なデータの収集が重要である.