2019 年 56 巻 5 号 p. 407-413
近年,小児がんのような希少がんの検体問題を克服すべく,ヒトの臨床腫瘍検体を免疫不全マウスに移植しマウス体内で増幅させる,ヒト化マウス,所謂Patient-derived xenograft(PDX)モデルが注目を集めている.高度免疫不全マウスを使用したPDXモデルはヒト細胞の増幅のみならず,正常造血・免疫系やヒト腫瘍病態をもマウス体内に再現するモデルである.白血病幹細胞や腫瘍微小環境の研究はこうしたPDXモデルを利用して飛躍的に進んでいる一方で,マウスとヒトとの交差性など,モデルとしての限界を認識しながら注意深く解析を進めていく必要がある.世界的には小児がん研究を目的としたPDX bank構築が小児造血器・固形腫瘍ともに進んできており,PDXを用いた新薬の前臨床研究など数々の臨床に繋がる貴重な報告がなされてきている.本邦においても著者らが構築してきた患者腫瘍検体によるPDXモデル技術を発展させ,2013年に小児悪性腫瘍領域で本邦初のPDX bankを全国白血病臨床試験に紐付いた形で立ち上げ,福島県立医大と京都大学をPDX作製施設として再発性急性リンパ性白血病の検体が集積される基礎研究体制を整え症例蓄積を進めている.免疫不全マウス開発の歴史,限界を克服する試みについて概説し,PDXモデルによる病態解析の実例と我々のPDX bankの取り組みを紹介する.