日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム11: 小児血液・腫瘍の疾患モデル―病態解明に向けて
白血病と骨軟部肉腫の発生機序を理解するためのex vivoマウスモデル
中村 卓郎
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2019 年 56 巻 5 号 p. 414-420

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抄録

急性骨髄性白血病(AML)の発症や悪性化の機序を研究する上で,骨髄移植マウスモデルは極めて有用である.野生型マウスや遺伝子改変マウスの骨髄から造血幹/前駆細胞を採取し,AML原因遺伝子を導入してX線照射したレシピエントに移植するモデルは,ヒトAMLの病態をよく再現し,in vivoにおけるAMLの動態解析や治療モデルとしても使用されてきた.我々は,Hoxa9/Meis1関連AMLの解析に骨髄移植モデルを利用することで,AMLの骨髄定着に必要なSytl1や,白血病の悪性化に重要なTrib1を同定し,これらの分子機能を解析した.一方,小児やAYA世代に発症するAMLと骨軟部肉腫には共通点が存在する.すなわち,中胚葉起源であること,ゲノム変異頻度の少なさ,原因遺伝子として融合型転写因子が形成されエンハンサーリプログラミングが生じること,等である.しかしながら,骨軟部肉腫のモデル作製は白血病モデルとは異なり従来困難であった.我々はAMLと骨軟部肉腫の共通性に着目し,マウス胎児から未分化な間葉系細胞を採取し,肉腫特異的融合遺伝子を導入して同系統マウスに移植するex vivoモデルの開発に成功した.これまでに作製したモデルは,Ewing肉腫,滑膜肉腫,胞巣状軟部肉腫を含む6系統であり,それぞれ病態解析を進めている.本総説ではモデルの具体例を紹介し,in vivoでの解析に主眼を置いた研究から明らかになった発症機構や,新たな治療法につながる標的解析について紹介する.

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© 2019 日本小児血液・がん学会
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