2020 年 57 巻 2 号 p. 111-115
受容体型チロシンキナーゼであるFMS-like tyrosine kinase 3(FLT3)の活性型変異は急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)においてみられる遺伝子変異の1つであり,特に塩基配列の重複変異であるinternal tandem duplication(ITD)は予後不良因子とされる.今回,難治性FLT3-ITD陽性小児AMLに対して,化学療法とgilteritinibを組み合わせた治療を行い奏功したので報告する.患者は13歳の男児で,FLT3遺伝子変異陽性AMLと診断され,寛解導入療法としてcytarabine,mitoxantrone,etoposideによる治療を施行したが,その後の骨髄検査では芽球を90%認め無効であった.そのため,2コース目の抗がん剤による寛解導入療法に引き続いてgilteritinib 80 mg/d投与を行った.治療は奏功し骨髄検査で完全寛解が確認された.その後さらに化学療法に引き続きgilteritinib投与を行う治療を2クール施行し完全寛解は維持された.この間grade 3–4にあたる敗血症と帯状疱疹をきたしたが,それまでの治療経過よりgilteritinib投与が関連する有害事象とは考えられなかった.治療に関連した有害事象としては,肝機能異常を認めたが間もなく軽快した.分子生物学的寛解を維持したままDR 1-locus allele mismatch非血縁者間末梢血幹細胞移植を行い,移植後1か月の骨髄検査では99%ドナータイプでFLT3-ITD陰性が維持されていることが確認された.難治性FLT3遺伝子変異陽性小児AMLに対して,化学療法とgilteritinibを組み合わせた治療が安全かつ有効であることが示され,同様の患者への治療において期待がもたれる.