2016年のWHO分類改定で統合診断が導入され,小児脳腫瘍の診療は大きな変革の時期を迎えている.小児グリオーマは成人で見られるIDH変異などの異常をほとんど有さず,BRAF遺伝子異常やNTRK融合遺伝子などの治療標的となる遺伝子異常が高率に検出される.また,低頻度ながら免疫チェックポイント阻害剤が奏効する一群も存在する.がんパネル検査が保険診療になったことで,今後は標的となる遺伝子異常に応じた治療開発が期待される.髄芽腫では標的となる異常はわずかであるが,詳細な遺伝子解析により以前よりも正確な予後予測が可能となり,遺伝子異常を予後因子に加えた層別化治療の開発が加速している.海外では高線量の全脳全脊髄照射を含む放射線治療が髄芽腫治療の中心だが,日本小児脳腫瘍コンソーシアムが実施した臨床試験では,軽減した全脳全脊髄照射線量にも関わらず,大量化学療法を追加した高リスク髄芽腫で標準リスクを上回る治療成績が得られている.過去の治療開発のエビデンスを踏まえた上でのサブグループ毎の治療の最適化が今後の課題である.また,特異的な遺伝子異常の同定により近年報告の増えている非定型奇形腫瘍ラブドイド腫瘍では標準治療の開発が求められている.放射線治療や髄注化学療法の有効性が示唆されているものの髄芽腫と同様の全脳全脊髄照射を中心とした治療法の限界が明らかとなっており,独自の治療戦略の開発が必要である.