日本小児血液・がん学会雑誌
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要望演題2: 新規治療
MEF2変異型myogenin制御性腫瘍溶解性アデノウイルスはPAX3-FOXO1陽性横紋筋肉腫を特異的に殺傷する
吉田 秀樹山本 正人
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2020 年 57 巻 2 号 p. 121-125

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抄録

PAX3-FOXO1(以下,P3F)は,胞巣型の横紋筋肉腫(以下RMS)の約60%の患者に認められる疾患特異的な融合遺伝子で,陽性例は予後不良である.既報によると,骨格筋の分化を司るmyogenin(MYOG)のプロモーター領域(以下,pMYOG)のMEF2結合部位の変異(以下mMEF2)は,P3FによるMYOGに対する転写活性を傷害しない.これを利用し,本研究ではP3F陽性細胞に特異性の高い,pMYOG制御性腫瘍溶解性アデノウイルス(以下,M-OAd,野生型;M-OAd-WT,変異型;M-OAd-m)を開発し,その有用性を検証した.2つのRMS細胞株(Rh30(P3F陽性),RD(P3F陰性)),と正常骨格筋細胞(SkMC)を使用した.M-OAd-WT,およびM-OAd-mはin vitroの実験において,Rh30を臨床使用可能な低濃度で殺傷したが,M-OAd-mはRDを殺傷するのに,M-OAd-WTより10倍高いtiterを要した.また,いずれのM-OAdもSkMCを殺傷しなかった.ヌードマウスを用いたin vivoの実験において,いずれのM-OAdもRh30由来の腫瘍の成長を有意に阻害し,腫瘍内において十分な拡散能を示した.これらの結果は,M-OAdがRMSに対して新たな治療選択肢となる潜在性を秘めていること,mMEF2存在がP3F陽性RMSに対する選択性を高め,安全性に寄与する可能性を示唆した.

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© 2020 日本小児血液・がん学会
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