日本小児血液・がん学会雑誌
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委員会報告
小児がん患者に対する疼痛管理の現状と課題
―JPLSG施設調査より 第2報―
加藤 陽子森 尚子新小田 雄一大曽根 眞也嘉数 真理子佐野 弘純篠田 邦大矢野 道広石田 裕二斎藤 雄弥澤田 明久豊田 秀実足立 壯一福島 啓太郎
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2020 年 57 巻 2 号 p. 178-184

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抄録

背景:わが国での小児がん患者に対する疼痛管理の現状は知られていない.

方法:2015年10月,日本小児白血病リンパ腫研究グループ支持療法委員会より参加155施設の実務担当者へ2016年3月末を回答期限とし,疼痛管理者,疼痛管理の現状,改訂WHO疼痛管理指針(以下改訂指針),オピオイド(以下OP),鎮痛補助薬,専門的治療に関してweb調査を施行した.

結果:81施設(52%)より有効回答が得られ,98%の施設で小児血液腫瘍医が疼痛管理を行っていた.軽度疼痛に対する第一選択薬は血管確保に関わらずアセトアミノフェン経口投与で,中等度以上の疼痛では強OP使用とペンタゾシン使用に分かれた.改訂指針の周知・実施率は37%だった.血管確保がない場合の強OP第一選択はモルヒネ(M)速放製剤内服(48%),フェンタニル(F)貼付(47%)で,血管確保下ではM静注(80%),F静注(68%)であった.神経障害性疼痛にプレガバリン(25%),骨痛にステロイド(20%),専門的治療として放射線照射(36%),神経ブロック(7%)が行われていた.

考案:本邦における小児がん患者に対する疼痛管理は小児血液腫瘍医が主に実施し,疼痛管理の目安はなく,off-label薬を使用せざるを得ない現状が明らかとなった.改訂指針を理解しつつ患者の病態や現状に応じた適正な疼痛管理の実施に向け,今後の学術的検討や標準化が必要である.

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© 2020 日本小児血液・がん学会
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