日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム3: 小児がんの国際共同臨床試験の現状と課題
胚細胞腫瘍における国際共同臨床試験(AGCT1531)
小野 滋黒田 達夫
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2020 年 57 巻 3 号 p. 210-214

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抄録

胚細胞腫瘍は良性腫瘍である成熟奇形腫から極めて悪性度の高い腫瘍まであり,発生母体も性腺と性腺外に分けられ多岐にわたる.そのため病理組織学的分類は複雑で悪性度も様々である.そのほかにも年齢による生物学的差異や原発部位による予後の差が存在する.加えて,小児と成人での特に性腺原発胚細胞腫瘍に対する考え方や治療ストラテジーの相違が存在する.そこで,統一された病期分類や新たなリスク分類の確立が必要と考えられ,米国小児がんグループ(Children’s Oncology Group: COG)を中心に悪性胚細胞腫瘍の国際consortiumが設立された.そのなかで低リスク症例に対する過剰治療と治療合併症の軽減,および高リスク症例に対するスタンダード治療の確立などが課題として取りあげられ,国際共同臨床研究が検討された.現在,COGの主導で国際共同臨床研究(AGCT1531)が進行中であり,①標準リスク群に対して,従来のBEP療法におけるシスプラチンの晩期毒性を避ける目的でカルボプラチンに変更したプロトコールについてBEP療法とのランダマイズ試験を実施する.②低リスク群に対して,旧来予後良好とされた精巣のみならず全ての原発巣の病期1症例に対して手術療法単独で経過モニタリングを行い,従来の化学療法併用療法との非劣性を証明する.の2試験を行っている.我が国でも,JCCGの胚細胞腫瘍委員会が中心となって,この国際共同臨床試験に参画し,現在国内の主要16施設に限って症例登録を開始している.

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© 2020 日本小児血液・がん学会
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