日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム4: 凝固異常症のupdate
血友病補充療法における半減期延長型製剤の有用性
西村 志帆溝口 洋子冨岡 啓太小林 正夫
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2020 年 57 巻 3 号 p. 215-219

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抄録

血友病は乳幼児期早期からの表在性出血とともに関節内や筋肉内などの深部出血を繰り返す.小児期からの第VIII因子製剤,第IX因子製剤の定期補充療法の導入は長期予後の改善と関連することが示され,血友病病患者のquality of life(QOL)を大きく向上させている.しかし,小児,特に低年齢では血管確保が難しく頻回の静脈注射は本人,家族にとって大きな課題となっていた.2014年にわが国で初めて半減期延長製剤(EHL)が市販され,当院でEHL製剤に変更して1年以上経過した血友病A 9名,血友病B 7名についてEHLの有用性について検討を行った.血友病A,血友病Bともに定期投与の注射回数を減らすことが可能となり年間出血回数も低下した.また,活動性の高い患者では標準型製剤と同様の方法で高いトラフ値を保てるようになった.当院包括外来を受診した患者において,定期補充療法で使用している製剤の割合から,血友病Aでは約7割,血友病Bでは全例がEHL製剤に変更していた.EHL製剤に変更した患者の満足度は高く,QOLは大きく向上した.エミシズマブの開発に伴い,血友病A治療薬の選択肢が拡がったことから,患者個々の状況に適した補充療法,個別化治療を行うことが重要となる.

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