日本小児血液・がん学会雑誌
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教育セッション2: 抗がん剤曝露(倫理)
抗がん薬曝露のリスク軽減に向けて
佐伯 康之松尾 裕彰
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2020 年 57 巻 3 号 p. 251-256

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抄録

抗がん薬は,1990年代までは一般薬と同様に特別な曝露対策を施すことなく取り扱われていた.しかし,抗がん薬を取り扱う医療者における抗がん薬曝露の影響について海外で数々の報告がなされたことから,ガイドラインの制定に至り,現在では多くの施設で曝露対策が施されている.抗がん薬による曝露は,正常細胞に対して毒性を生じ,その発現時期によって皮膚炎,頭痛などの急性毒性,発がん,催奇形性などの慢性毒性に分けられる.経路は,経皮,吸入,経口に加え,針刺しによる直接的な体内への取り込みが挙げられる.機会は,取揃え,調製・調剤,搬送,投与,投与後の処理など抗がん薬取り扱いすべての手順が含まれる.対象は,抗がん薬を直接取り扱う医療職に加え,掃除者,介護人,ご家族などの非医療者まで,抗がん薬治療中の患者に関わるすべての人が対象となる.曝露予防対策は,一般的に閉鎖式接続器具等の導入,安全キャビネット使用,調製者等の人的管理,ガウン・マスク・ゴーグル・グローブなどの個人防護具の着用を複数組み合わせて実施する.また,環境曝露発生時には,スピルキットを用いるが,あらかじめ運用手順を定めて施設内に広報しておくことが重要である.抗がん薬曝露のリスクは,各手順の曝露経路および抗がん薬ごとの毒性について正しい知識を持ち,安全な取り扱い方法を実践することにより,軽減することができる.

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