2020 年 57 巻 3 号 p. 257-263
原発性免疫不全症primary immunodeficiency: PIDは免疫調節機構にかかわる遺伝子の異常により,易感染性や自己免疫,自己炎症などの免疫制御機構の破たんがもたらす疾患群で,400以上にわたる疾患,責任遺伝子が同定されてきている.このなかでいくつかは悪性腫瘍,特にリンパ系腫瘍を高頻度に合併する.悪性腫瘍の発症メカニズムとしては,責任分子がリンパ球の分化や制御に直接かかわっている場合,またはリンパ球の免疫監視機構の欠如によってEBウイルスなどの感染が排除できず,腫瘍化する場合などが想定される.PIDの発症に関連するいくつかの遺伝子は,血液腫瘍においても体細胞変異として認められるものが多く,相互の理解がリンパ球の腫瘍化を考える上で重要な視点となる.