2020 年 57 巻 5 号 p. 341-348
末梢性神経芽腫群腫瘍をFavorable HistologyとUnfavorable Histology(UH)に分類し予後を予測する国際神経芽腫病理分類は米国小児がん治療グループ臨床試験に組み込まれ,治療層別化に重要な役割を果たしてきた.しかし,UH腫瘍は依然,予後不良であり,我々は予後に関与する分子生物学的異常と形態学的変化の関連について研究を続け,まずMYC-driven neuroblastomaの概念を確立した.これはn-MYC/c-MYCタンパク発現のほうが遺伝子増幅よりも予後と相関するというデータに基づくもので,核小体大型化など形態学的特徴も明確になった.さらにTERT(telomerase reverse transcriptase)タンパク産生亢進や,ATRX(α-thalassemia/mental retardation syndrome X-linked)タンパク無産生によるALT(alternative lengthening of telomere)など,免疫組織化学で検出可能かつActionable/Druggableな標的タンパク発現の有無によりUH腫瘍中に4つのsubgroup(MYC, TERT, ALT, Null)を提唱するに至った.これにより病理分類を充実させ,分子標的薬剤による精度の高い臨床研究への道を拓くことが期待される.