2020 年 57 巻 5 号 p. 349-353
従来,肝臓外科手術においては,外科医の経験に頼るところが大きく,解剖の理解や技術の習得には長い年月を要するものであった.しかし,近年の画像解析システムの進歩や色素蛍光法などの普及による術前シミュレーションや,術中ナビゲーションは,安全で正確な肝切除を可能とし,今や不可欠な手法となりつつある.肝臓外科領域におけるシミュレーション・ナビゲーションの進歩と,われわれの取り組みを紹介する.肝臓外科で用いられている主な術前シミュレーションには,造影CT画像を画面上で立体化して表示する方法と,実際の3D模型として造形する方法がある.また,術中ナビゲーションの目的は,切除領域の正確な特定や,切除を目的とする腫瘍・脈管の位置の同定である.肝内脈管の走行は症例によって大きく異なり,また分厚い肝実質をまとっているために透見することができない.術前シミュレーションによる理解を,術中の種々の方法によるナビゲーションにより,実際の肝臓で正確に一致させることで,安全な肝切除が可能となる.