日本小児血液・がん学会雑誌
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How I Treat 1
小児再発・難治FLT3変異陽性AMLの治療
富澤 大輔
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2021 年 58 巻 2 号 p. 111-117

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抄録

FLT3はタイプIII受容体型チロシンキナーゼであり,成人急性骨髄性白血病(AML)の約30%,小児AMLの約10%で変異を認める.AMLのFLT3変異は,FLT3遺伝子内縦列重複変異(FLT3-ITD)とチロシンキナーゼドメイン変異(FLT3-TKD)の2種類が知られているが,頻度が高く,また予後と相関するのは前者のFLT3-ITDである.FLT3-ITD陽性AMLは小児においても予後不良であり,寛解導入率が低く,再発率も高い.現在,本邦の小児AMLプロトコールでは高リスク群として第1寛解期における造血細胞移植の適応であるが,残念ながら予後の改善には至っていない.近年,FLT3を標的としたチロシンキナーゼ阻害薬の開発が進んでおり,本邦においてもギルテリチニブとキザルチニブの2種類の薬剤が成人の再発・難治FLT3変異陽性AMLに対して承認されている.現段階では小児適応のあるものや通常化学療法との併用の適応のあるもの,さらには初発例への適応のあるFLT3阻害薬は本邦では存在しないが,再発・難治FLT3変異陽性AMLに対しては小児例においても治療の選択肢となりつつある.FLT3阻害薬の現在,新たなFLT3標的治療の開発,今後のFLT3変異陽性AMLに対する治療の展望について概説する.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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