2021 年 58 巻 5 号 p. 378-383
小児期からAdolescents and Young Adults=「AYA」世代と称される15–29歳に発生するがん(小児・AYAがん)は,成人がんと比較すると稀ではあるものの,本邦における若年者の主要な死亡原因となっている.とりわけ,遠隔転移を伴うものや再発を来す小児・AYAがんは,依然として極めて予後不良であり,多くの例において標準治療は確立していない.一方,近年のゲノム解析技術の進歩により,ゲノム医療が実装され,標準治療からはずれた小児・AYAがんにおいても遺伝子異常に見合った治療の提供がなされるようになった.しかし,ゲノム医療を推進する中で,小児・AYAがんでは,標的となる遺伝子変異が少ない,有用性が確認されている分子標的薬が少ない,また入れる臨床試験がほとんどないなどのいくつかの課題が見えてきた.さらに小児・AYAがんと成人がんでは,遺伝子変異のスペクトラムが異なるので,小児・AYAがんに適した遺伝子パネルの開発も必要である.小児・AYAがんにおけるゲノム医療をより発展させるためには,これらの課題解決が肝要である.