日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム7: 難治性固形腫瘍の新規治療法開発
神経芽腫に対する全く新しいNK細胞養子免疫治療の開発
川久保 尚徳田尻 達郎
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2021 年 58 巻 5 号 p. 374-377

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抄録

背景:神経芽腫の新しい治療戦略として,NK細胞の養子免疫治療が報告されているが,高活性化かつ高用量のNK細胞製剤の報告は未だにない.共同研究施設で開発された,ヒト末梢血から増幅製造されるoff-the-shelf型のNK細胞様製剤に関して報告する.方法:高活性化NK様細胞(GAIA-102)は,CD3陽性細胞を除去した末梢血単核球を接着培養の条件下で14日間培養して作成した.3D培養を行なったIMR-32(神経芽腫細胞株)を蛍光標識GAIA-102と共培養し,GAIA-102の腫瘍塊への浸潤を観察し,その細胞傷害活性をフローサイトメトリーを用いて観察した.結果:スフェロイドを用いた3Dアッセイでは,GAIA-102は,primary NK細胞,抗GD2抗体単独,または両方の組み合わせと比較して,IMR32の腫瘍塊に対する高い細胞傷害活性を示した.ライブイメージングにより,GAIA-102はスフェロイドに対して効率的に浸潤し,スフェロイドの腫瘍細胞が死滅することを確認した.結論:GAIA-102は,3D培養を行なった神経芽腫スフェロイドに対して高い浸潤能と細胞傷害活性を示した.GAIA-102は,再発難治神経芽腫の新規治療に有望な選択肢であると考え,現在,再発性または難治性の神経芽細胞腫の臨床試験を準備している.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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