2021 年 58 巻 5 号 p. 395-398
私は骨・軟部腫瘍を専門とするがんセンター勤務歴のある整形外科医であり,成人科としてAYA世代の診療について考え方や経験を述べたい.AYA世代の患者には治療開始前に妊孕性温存についての説明を行うが,治療は2つに分けて対応している.おおむね15歳から19歳の場合はがん治療により,これまで当たり前であった学業が中断されることが多く,学業支援が必須でありまた精神,経済的に自立しておらず本人のみならず保護者への対応も重要となる.18歳未満であれば小児慢性特定疾病の申請,骨肉腫等で人工関節置換を行った場合は身体障害者手帳の申請を行う.おおむね20歳から39歳の場合は就労,恋愛,結婚,出産など人生が劇的に変化する年代であり,そのステージに応じた対応が必要になってくる.身体障害者手帳の申請に加えて,就職を考えている方には「障害者雇用枠」について説明を行うことがある.四肢に人工関節置換を行っているケースは,身体的ハンデキャップと捉えがちであるが,障害をオープンとすることで雇用枠と働きやすい環境を整えてもらえるというメリットもある.治療は初診時の診察室(患者と医師)から始まるものの,良い治療は医師と患者だけで決して作り上げるものではなく,一連の治療に関わるすべてのスタッフの高いプロ意識や協力が必須であり,患者の幸せのためにMDT(MultiDisciplinary Team:多職種専門家によるチーム)によるサポートが大切であると信じている.