2021 年 58 巻 5 号 p. 399-404
治療成績の向上に伴い,小児がん経験者にとって,トータルケアの一環である長期フォローアップのニーズは高まっている.また,国のがん対策においてもその体制の必要性が示されている.これらから2017年より「小児・AYA世代のがんの長期フォローアップ体制整備事業」として,小児がん患者の長期フォローアップを担当する医療従事者が,小児がんの長期フォローアップや移行期医療の知識および診療のあり方を習得できるよう研修会が開催されている.これまでの参加者のうち約4割は看護師で,参加者の背景には変化もみられている.研修参加者へのアンケート調査から,看護師は,研修前には十分備えていなかった知識を獲得し,また,成長・発達の過程にある小児がんの患者に対して,診断後から長期的な関わりの必要性の認識が高まったことが示唆され,研修参加の効果が評価される.一方で臨床現場でのフォローアップ外来の運営には,組織の体制づくりに関連したマンパワーや診療報酬などの課題が伴う.小児がん経験者のニーズがよりよく満たされるよう,今後の課題についても検討が必要であると考える.