2021 年 58 巻 5 号 p. 410-413
近年の小児がん治療におけるリスク層別療法や支持療法の発展により,小児がんの生存率は大きく改善している.一方で,小児がん経験者は疾患が治癒した後も依然として晩期合併症のリスクをかかえている.小児がん経験者が,健康的なライフスタイルを促進・維持していくための,長期的なフォローアップの重要性については論を俟たないが,フォローアップが必要な患者すべてが適切なフォローアップを受けているわけではない.小児がん経験者に起こり得る晩期合併症のスペクトルの広さのため,提供すべきケアが複雑となり,時として移行期支援の障壁となったり,フォローアップが中断されてしまったりすることもある.患者自身の合併症と長期フォローアップに対する知識もまた,フォロー継続の大きな要素である.経験者のヘルスリテラシー獲得のための患者教育は,小児がん経験者の長期フォローアップを充実させていくための重要な要因である.日々変化していく小児がん診療の中で,フォローアップのためのツールやフォローアップ体制の充実が望まれる.