日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
再発急性リンパ性白血病に対する骨髄移植の3か月後に発症した治療関連心機能障害の診療経験
佐野 正太郎吉川 利英有賀 譲鈴木 孝二谷澤 昭彦田村 知史大嶋 勇成
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2021 年 58 巻 5 号 p. 437-441

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抄録

治療中に再発した急性リンパ性白血病の9歳男児.骨髄破壊的前処置後にHLA一致同胞より骨髄移植を行った.移植の3か月後,アントラサイクリン最終投与からは5か月後にBNP上昇,心拡大,左室駆出率低下を認めた.アントラサイクリンに加えシクロホスファミドや全身放射線照射なども心機能障害の危険因子であり,治療関連心機能障害と診断した.心不全を合併したためカンデサルタン,カルベジロールを含む治療を行い,20.9%まで低下した左室駆出率は治療開始から8か月後には56.7%まで改善した.成人の場合,アントラサイクリンによる心毒性の多くは最終投与から1年以内に発症し,早期の治療介入により心機能の改善が見込めるという報告がある.小児例においても,心機能障害をもたらす複数の危険因子を有する場合には,定期的なBNP測定と心臓超音波検査により心不全症状出現前に心機能障害の早期発見に努めることが肝要と考えられた.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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