日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
集学的治療においてランダムスタート法による妊孕性温存を行った髄芽腫の一例
西尾 周朗納富 誠司郎濱端 隆行今井 剛田中 優本田 徹郎板坂 聡脇 研自
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2021 年 58 巻 5 号 p. 432-436

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抄録

Adolescent and Young Adult(AYA)世代のがん患者において,妊孕性温存は治療後の人生を見据えた際に克服すべき重要な課題である.髄芽腫の治療法として用いられるSt. Jude medulloblastoma-96 protocolでは,腫瘍摘出術・放射線療法の後に自家末梢血幹細胞移植を併用した高用量アルキル化薬を含む大量化学療法が行われる.高い治癒率が得られる一方で,妊孕性の喪失が問題である.症例は小脳髄芽腫の16歳女性.腫瘍全摘出術後,術後14日で末梢血幹細胞採取を行い,24日から23.4 Gyの全脳全脊髄照射および32.4 Gyの腫瘍床照射を開始した.放射線治療後,抗ミュラー管ホルモンは1.84 ng/mLと低値であった.ランダムスタート法での妊孕性温存を行う方針とし,FSH製剤を9日間投与後,卵胞成熟のためにhCG製剤を投与した.4個の卵子を凍結保存できた.卵子保存に伴う有害事象はなく,大量化学療法も遅滞なく終了した.ランダムスタート法による卵子保存は,原疾患治療の遅滞なくAYA世代がん患者の妊孕性温存を実現する技術として期待される.

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