日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
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症例報告
KIAA1549-BRAF融合遺伝子を有する治療抵抗性視神経膠腫におけるtrametinibの治療経験
本田 護福岡 講平津村 悠介森 麻希子入倉 朋也渡壁 麻衣平木 崇正井上 恭兵三谷 友一大嶋 宏一荒川 ゆうき福地 麻貴子本田 聡子坂中 須美子田波 穣中澤 温子栗原 淳康 勝好
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2021 年 58 巻 5 号 p. 455-458

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抄録

MEK阻害剤であるtrametinibは,BRAF遺伝子異常を有する視神経膠腫に対する有効性が期待されているが,本邦において小児の視神経膠腫に対する本薬剤の使用経験は極めて乏しい.今回我々はがん遺伝子パネル検査によってKIAA1549-BRAF融合遺伝子が検出された治療抵抗性の視神経膠腫に対してtrametinibを使用した症例を経験したため報告する.症例は8歳女児で生後7か月に視神経膠腫と診断された.診断後から合計5種類の化学療法と生検を含めて4回の手術療法を受けたが腫瘍は増大傾向であった.水頭症による意識障害が進行したが,髄液蛋白濃度が高く脳室腹腔シャントは施行できなかった.がん遺伝子パネル検査でKIAA1549-BRAF融合遺伝子が検出され,trametinibを2か月間投与した.投与期間中は画像上腫瘍増大の抑制効果を認め,髄液蛋白濃度も低下した.NCI-CTCAE version 5においてGrade 3以上の有害事象を認めなかった.本邦におけるtrametinibの有効性と安全性について,今後の症例の蓄積が重要と考えられる.

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