日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム1:小児血液腫瘍疾患に対する新規解析手法
転写因子EVI1とGATA2の発現異常による白血病発症機構の解析
片山 紗乙莉鈴木 未来子
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2022 年 59 巻 2 号 p. 118-123

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抄録

inv(3)(q21.3q26.2)またはt(3;3)(q21.3;q26.2)を伴う急性骨髄性白血病(AML)はAMLの1–2%を占める予後不良な一群である.EVI1遺伝子の高発現が認められることが特徴として知られていたが,その異常発現のメカニズムについては長い間わかっていなかった.我々のグループは,大腸菌人工染色体(BAC)クローンを結合する技術を応用して,3q21と3q26との間の逆位アリルを200kbにわたり再現したトランスジェニックマウス(3q21q26-EVI1マウス)を樹立し,3q21側に存在するGATA2遺伝子の上流に位置するエンハンサー領域(G2DHE)が,逆位・転座によりEVI1遺伝子の発現を誘導するようになり白血病発症に至ることを示した.さらに3q21q26-EVI1マウスをGata2遺伝子ヘテロ欠失マウスと交配することにより,EVI1遺伝子高発現単独での影響とGATA2遺伝子発現低下が加わることでの影響を比較しそれぞれの白血病発症における役割について明らかにし,3q21q26白血病においてはGATA2エンハンサーによるEVI1発現誘導だけでなく,GATA2ハプロ不全の機序もまた白血病発症に重要であることを示した.3q21q26-EVI1マウスはヒト3q21q26白血病の巨核球・血小板増多を再現することに成功した唯一のモデルマウスであり,長距離エンハンサーを含めてゲノム異常を再現することのできるBACクローンの結合技術の有用性を示す一例といえる.BACクローンの結合技術を用いた染色体逆位・転座モデルマウスは染色体異常の頻度が高い小児白血病の病態解明にも有用なツールとなりうる可能性がある.

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© 2022 日本小児血液・がん学会
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