日本小児血液・がん学会雑誌
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59 巻, 2 号
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第63回日本小児血液・がん学会学術集会記録
特別企画1:レジェンドからの提言
  • 福澤 正洋
    2022 年 59 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    小児外科医として小児がんの臨床研究を開始して40年の歳月が過ぎた.これまで,常に素晴らしい先生方に出逢い,臨床研究・学会活動・グループスタデイ・JCCG活動に参加させていただきました.私が歩んだ道を振り返り,若い先生方に提言したい.

    〈大阪大学(1981~1997年)および日本大学(1998~2003年)での臨床経験〉1981年から小児がんの臨床を開始し,河 敬世先生と出逢った.河先生のリーダーシップで固形腫瘍に対する集学的治療(1985年)に参画し,また原 純一先生と共に進行神経芽腫に対する遅延局所療法を1993年に開始した.1998年から日本大学第一外科を担当し,麦島秀雄先生と出逢った.麦島先生には遅延局所療法を推進していただき,JNBSGの臨床研究へ繋げていただいた.〈日本小児がん学会での経験〉2002年副理事長(河 敬世理事長),2004年理事長として日本小児血液学会との統合に努めた.2010年には最後の日本小児がん学会の会長を務めさせていただいた.〈日本ウィルムス腫瘍スタディグループ(JWiTS)での経験〉2003年から2015年まで,越永従道先生(事務局長)の支えで委員長を務めた.中央病理診断(秦 順一先生)および分子生物学的研究(金子安比古先生)を推進していただいた.〈日本小児がん研究グループ(JCCG)での経験〉2013年6月JCCG準備委員会(水谷修紀委員長)の副委員長として参画し,2014年12月から水谷理事長の下,副理事長および運営委員長を2018年6月まで務めさせていただいた.

    40年間を振り返り,若い先生方に2つのメッセージを送りたい.①多逢聖因(たほうしょういん)(安岡正篤):良い人に交わっていると,気づかないうちに良い結果が生まれる.②不東(ふとう)(玄奘三蔵):玄奘のインドに達せずば東へ戻らずという気概を示し,“一度立てたら志を決して曲げることなく最後まで貫くこと”が大切である.

特別企画2:子どもたちを支える仲間たち
シンポジウム1:小児血液腫瘍疾患に対する新規解析手法
  • 片山 紗乙莉, 鈴木 未来子
    2022 年 59 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    inv(3)(q21.3q26.2)またはt(3;3)(q21.3;q26.2)を伴う急性骨髄性白血病(AML)はAMLの1–2%を占める予後不良な一群である.EVI1遺伝子の高発現が認められることが特徴として知られていたが,その異常発現のメカニズムについては長い間わかっていなかった.我々のグループは,大腸菌人工染色体(BAC)クローンを結合する技術を応用して,3q21と3q26との間の逆位アリルを200kbにわたり再現したトランスジェニックマウス(3q21q26-EVI1マウス)を樹立し,3q21側に存在するGATA2遺伝子の上流に位置するエンハンサー領域(G2DHE)が,逆位・転座によりEVI1遺伝子の発現を誘導するようになり白血病発症に至ることを示した.さらに3q21q26-EVI1マウスをGata2遺伝子ヘテロ欠失マウスと交配することにより,EVI1遺伝子高発現単独での影響とGATA2遺伝子発現低下が加わることでの影響を比較しそれぞれの白血病発症における役割について明らかにし,3q21q26白血病においてはGATA2エンハンサーによるEVI1発現誘導だけでなく,GATA2ハプロ不全の機序もまた白血病発症に重要であることを示した.3q21q26-EVI1マウスはヒト3q21q26白血病の巨核球・血小板増多を再現することに成功した唯一のモデルマウスであり,長距離エンハンサーを含めてゲノム異常を再現することのできるBACクローンの結合技術の有用性を示す一例といえる.BACクローンの結合技術を用いた染色体逆位・転座モデルマウスは染色体異常の頻度が高い小児白血病の病態解明にも有用なツールとなりうる可能性がある.

  • 大和 玄季
    2022 年 59 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    急性骨髄性白血病(AML)は臨床的にも生物学的にも非常にヘテロな疾患である.次世代シーケンサーの登場以来,ゲノム解析技術の進展は目覚ましく,網羅的に遺伝子解析,融合遺伝子解析,発現解析等が行われてきた.その一方で未だに予後因子の同定できない症例が一定数存在しており,AMLにおける新規のbiomarkerの同定は急務である.

    これまで成人のAMLではDNAメチル化パターンと細胞遺伝学的背景の関連が報告され,更にメチル化異常と予後との関係についても報告され始めている.小児AMLにおいても少ないながらDNAメチル化パターンと分子生物学的異常の関連,予後との関連について報告がされ始めてきた.筆者らは本邦の臨床試験であるJPLSG AML-05試験に登録された初発小児AML患者64例を対象に,genome-wideのDNAメチル化解析を行い,小児AMLにおけるDNAメチル化パターンの臨床的意義や分子生物学的背景との関係性,および予後との相関を比較検討した.その結果,特定のCpGサイトにおけるDNAメチル化レベルは,小児AML患者の遺伝子変化や遺伝子発現パターンを裏付けるのに有用であり,また,予後の層別に関しても有用である可能性を示し,今後の臨床への応用が期待された.本稿ではAMLにおけるこれまでのDNAメチル化研究および筆者らの研究を中心に,AMLにおけるDNAメチル化解析の意義を概説する.

  • 齋藤 祐介
    2022 年 59 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    がん細胞は正常細胞とは異なった代謝特性を利用し,エネルギー産生や核酸・アミノ酸・脂質の合成することで細胞増殖を促進する.これまでがん細胞は一律に好気的解糖を好んで利用すると理解されていたが,網羅的メタボローム解析や細胞レベルでの代謝フラックス解析などの解析技術の進歩により,癌種や遺伝子変異の違いさらにはがん幹細胞で異なる代謝特性を有することが明らかとなった.白血病細胞の生存・増殖に必要なエネルギー獲得機序も解明されつつあり,解糖系が白血病発症に必須である一方で,白血病幹細胞(LSC)の生存はミトコンドリアでの酸化的リン酸化(OXPHOS)によるATP産生に依存し,化学療法抵抗性はOXPHOS活性が相関することが報告されている.我々は難治性白血病のエネルギー代謝を細胞外フラックスアナライザーで分析し,メタボローム解析およびトランスクリプトーム解析を併用することで新規治療標的の同定を可能にした.また,BCL-2阻害剤ベネトクラクスとアザシチジンの併用療法(Ven/Aza)は,LSCのグルタチオンレベル低下とアミノ酸代謝阻害によるOXPHOS抑制が主な作用機序であるため,代謝解析でベネトクラクス薬剤感受性と相乗効果を有する併用薬の同定が可能である.今後はシングルセルメタボロミクス,リピドーム分析など更なる解析技術との融合で白血病エネルギー代謝を標的とした新たな治療薬の開発が期待される.

シンポジウム2:再発ALL治療の現状と未来
  • 豊田 秀実
    2022 年 59 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    先進国における小児急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia, ALL)の5年生存率は,治療骨格の最適化や層別化治療の導入などにより90%を達成した.しかし依然約15%の症例で再発し,初発時の治療が強化されている分,再発例の治療抵抗性は高くなっている.小児の第一再発ALLのうち,化学療法での治癒も見込め,世界的標準治療が確立されつつある標準リスク群や中間リスク群では70%を超える4年無イベント生存率が期待できる一方,標準治療が存在せず,ほぼ全例で造血細胞移植が行われてきた高リスク群の3年無イベント生存率は30%以下と満足できるものではない.近年,小児再発ALL治療においてChimeric Antigen Receptor-T細胞療法やBlinatumomab,Inotuzumabといった革新的な新規医薬品の導入が進んでいるが,現在のところ治療反応性に影響を与える白血病要因・免疫環境要因・患者要因は同定されておらず,これら新規医薬品の適正使用の確立が望まれる.本稿では,小児再発ALLに対する治療の現状をふまえ,日本における治療の将来について概説する.

シンポジウム7:小児外科医・小児腫瘍医が知っておくべき種々の領域の固形腫瘍における治療・手術~最近の動向と今後の展望II.脳・眼領域腫瘍
  • 鈴木 茂伸
    2022 年 59 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    眼腫瘍の代表疾患として,眼窩横紋筋肉腫と眼内の網膜芽細胞腫がある.眼窩横紋筋肉腫は予後良好部位とされ,生検で確定診断後に化学療法,放射線治療を併用して治癒を目指す.眼球を温存することで視機能も期待できる.網膜芽細胞腫は,眼内初期病変はレーザーや小線源治療など局所治療単独,眼内進行期病変は化学療法に加え選択的眼動脈注入などを併用し眼球温存を目指す.緑内障などの合併症眼は眼球摘出を行い,腫瘍の浸潤範囲に基づき後療法の適応を決める.網膜芽細胞腫の原因遺伝子はRB1であり,包括的遺伝子パネル検査の意義は限定的である.

教育セッション2:脳腫瘍(ATRT/上衣腫)
  • 隈部 俊宏, 柴原 一陽, 宇塚 岳夫
    2022 年 59 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    WHO2021が発表され上衣腫分類は細分化された.小児頭蓋内上衣腫は本邦で年間発生60例程度と推測される稀少疾患である.この稀少疾患に対してWHO2021に則って治療方針を確立していくのは容易ではない.過去公表された査読性のあるガイドラインはEuropean Association of Neuro-Oncology(EANO)から2018年に発表されたもの一つだけである.このガイドライン一番の特徴は,生後12ヶ月以上で放射線治療を開始することにより治療成績向上を目指すことを強く推奨した点であろう.本邦からは2021年9月に日本脳腫瘍学会ホームページ上に小児AYA世代上衣腫ガイドラインが公表された.3歳未満の放射線治療に対してはエビデンスが足りないと判断し,強く推奨することは控えている.現在多施設共同での大規模前向き第2,3相試験は,国際的に2つ進行中である.ともに化学療法の有効性を明確にしようとしている.今後上衣腫に対して,1)全摘出後のさらなる治療成績向上,2)化学療法の有用性の検証,3)照射開始閾値の決定,4)分子生物学的分類による治療方法選択,といった問題を解決する必要があると考えられる.

総説
  • 石田 也寸志
    2022 年 59 巻 2 号 p. 151-162
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において小児の割合は少なく,成人と比べ軽症とされているが,小児がん患者の実態はまだ不明である.本総説では,海外のメタ解析を中心に成人がんと小児がんの情報をまとめた.成人がん患者COVID-19の死亡割合は全がんで14~28%,血液腫瘍では34%と報告され,高齢者,男性,併存疾患が重症化リスクとされている.特に骨髄抑制のある状況では死亡割合が50%を超える報告もあり院内感染には注意が必要である.一方小児がん患者では成人がん患者に比べると生命予後は良いが,先進国でも治療延期がよくみられており,一定割合の重症例がICU入室を余儀なくされ,0~3%の死亡割合が報告されており,小児でも骨髄抑制を伴う強力な治療下では致死的になり得る.がん患者に対するCOVID-19ワクチンは成人では広く行われているが,一般集団と比べ抗体陽性化比が固形腫瘍0.95に対して血液腫瘍0.62と低い.小児・若年がんのデータは少ないが,今後日本でも積極的なワクチン接種の対象候補となることが想定される.小児がん経験者では,COVID-19に関連する健康不安が強くなり,身体的晩期合併症を有する場合にはその傾向が強いため,遠隔診療などを応用することが望まれる.現時点で小児がんに対する診療ガイドラインは,専門家のコンセンサスによる提言がほとんどである.

原著
  • 萩原 洋子, 米本 司, 鴨田 博人, 木下 英幸, 石井 猛
    2022 年 59 巻 2 号 p. 163-166
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    悪性骨軟部腫瘍の根治的手術では,腫瘍切除とともに周囲の骨・筋・関節・靭帯の切除を伴う.関節の温存が難しい腫瘍切除手術では,その機能や容姿を保たせるため,再建に人工関節を使用する場合が多い.再建した人工関節の晩期合併症として,人工関節のゆるみや遅発性感染があげられる.悪性骨軟部腫瘍手術で使用された人工関節の晩期合併症は,頻度も高く難治性である.治療には長期間かかることから,小児AYA世代で晩期合併症が起こると,日常生活の大きな妨げの原因となる.治療終了から10年以上経過後に,難治性深部感染の治療を行った2症例を報告し,このような晩期合併症を起こしている症例の問題点を検討した.

  • 竹之内 直子, 後藤 裕明
    2022 年 59 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    【目的】難治小児がん患者における在宅療養のニーズが拡大しているが,症例数の少なさや,治療背景の変化に伴う子どもや家族にとっての意思決定の難しさに起因する問題が存在する.終末期に在宅での療養を希望する小児がん患者および家族へのケアを行う訪問看護師の困難とニーズを明らかにし,子どもと家族にとってより良い療養生活となるための訪問看護との連携の在り方について検討した.【方法】2018年1月から3月に,神奈川県で小児・終末期の対応を標榜する395の訪問看護ステーションに,終末期にある小児がん患者の訪問看護経験,ケアに伴う困難およびニーズについて質問紙調査を行った.【結果】148事業所から有効回答が得られ,終末期の小児がん患者の訪問経験は24(16.2%)事業所にあった.ケアの困難として疾患特有の症状アセスメントや,子どもと家族への心理的ケアがあり,医療機関との連携体制,疾患に関連した知識の取得がニーズとして挙げられた.【考察】訪問看護師の経験の少なさは,がんの子どもや家族の対象理解や,疾患の特徴に関連した知識や技術を提供するうえでの困難さと関連していると考えられる.また,短期間での対象者との信頼関係の構築や支援のために,医療機関との連携のニーズがあると考える.【結論】終末期にある小児がん患者と家族のQOLを保証し,安心した療養生活が送れるよう,訪問看護師と医療機関の連携体制の構築や,移行前からの継続した協働や情報共有の機会が必要である.

症例報告
  • 植田 智希, 深沢 達也, 久保田 哲夫, 宮島 雄二
    2022 年 59 巻 2 号 p. 175-178
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    中枢神経系への浸潤を伴う未分化大細胞リンパ腫(ALCL)に対して化学療法と髄注に放射線照射を追加した治療で寛解を持続している症例を報告する.症例は5歳男児.来院時は左頸部にリンパ節腫脹を認めた.MRIで脳内に腫瘤を認め,髄液細胞診は細胞数26/μLで,細胞診は陽性であった.PET-CTでは,原発巣の他に骨と皮下に多数の異常集積像を認め,脳内腫瘤部は異常な集積を認めた.骨髄検査は異常なかった.頸部リンパ節生検の病理所見でALK陽性ALCLと診断し,病期はIV期であった.治療は,ALCL99プロトコールを中心に大量メトトレキセートと大量シタラビンを含んだレジメンを追加した.髄注は10回行い,3回目の髄注時から細胞診は陰性になった.放射線療法は,全脳全脊髄照射18 Gy(12分割)を行った.現在,診断から58か月,治療終了後38か月を経過し,寛解を維持し生存中である.

  • 石北 悦子, 鏑木 多映子, 大和 玄季, 川島 淳, 原 勇介, 飯島 真由子, 奥野 はるな, 平戸 純子, 渡部 悟, 大木 健太郎, ...
    2022 年 59 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    白血病の中枢浸潤は,髄液細胞数上昇と髄液細胞診での芽球の証明による診断が一般的だが,芽球と判定できない場合には診断に苦慮する.症例は0歳9か月時に急性骨髄性白血病M5aを発症した女児.KMT2A MLL) 再構成陽性(転座相手不明)で,中枢神経浸潤なく標準化学療法を終了した.退院5か月後に繰り返す嘔吐,痙攣を発症し,中枢神経再発を疑ったが髄液細胞診で明らかな芽球は認めず,骨髄でも再発所見はなかった.髄液細胞でKMT2A-FISH解析を施行したところ,KMT2A-split signal陽性であり,フローサイトメトリ (FCM) 解析でも単球系細胞のmonoclonalな増生を認め,中枢神経再発と確定診断した.単球性白血病の芽球は組織に移行し分化,増殖することが知られており,中枢神経再発を強く疑うが髄液細胞診で診断に至らない場合は,FISH解析やFCM解析が有用な可能性がある.

  • 金山 拓誉, 奥村 優希, 長谷川 智大, 外園 晃弘, 太田 武志, 久保 慎吾, 一瀨 栄佑, 小松 博史
    2022 年 59 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    症例は15歳の女児.近医で5歳時に汎血球減少を指摘され,refractory cytopenia of childhood(RCC)と診断された.輸血依存はなく,特に重篤な感染症や出血症状などなく経過していた.12歳時に当科紹介となり,明らかな顔貌異常や外表奇形は認めなかったが–2.4 SDの低身長を認めた.骨髄液検体のG-banding法では再現性をもって一部の細胞で21トリソミーを認めた.このため,15歳時に頬粘膜を用い21番染色体間期核FISHを行ったところ,モザイク型21トリソミーと診断された.モザイク型21トリソミーは,必ずしも21トリソミーに典型的な表現型をとるとは限らないが,これまでRCCの合併例は報告がない.RCC症例の中にモザイク型21トリソミーの未診断例が潜在している可能性があり,低身長や核型異常から疑わしい場合は念頭におくべきであると考えられる.

  • 興梠 雅彦, 松石 登志哉, 藤崎 徹, 稲垣 二郎, 佐藤 哲司, 神薗 淳司, 安井 昌博
    2022 年 59 巻 2 号 p. 188-191
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    ステロイド使用による高眼圧症の治療にはβ受容体遮断点眼薬が使用されるが,副作用に低血糖があることはあまり知られていない.ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)の治療として長期間ステロイドを使用し高眼圧症を発症したため,カルテオロール塩酸塩点眼液で加療していた1歳女児が,感染性胃腸炎に罹患した際,意識障害,けいれんを伴う重症低血糖を併発した.

    低血糖の重症化の原因としてβ受容体遮断点眼液が一要因と考えられた.β受容体遮断薬は受容体遮断という薬物学的特性から受容体結合占有率が高く,血漿中薬物濃度にかかわらず副作用発現につながり易いため,点眼液のわずかな投与量であっても注意が必要である.

  • 浮田 明見, 中原 康雄, 大倉 隆宏, 石橋 脩一, 橋本 晋太朗, 高橋 雄介, 丸中 三菜子
    2022 年 59 巻 2 号 p. 192-196
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    3歳男児,腹痛で受診し,左腎腫瘍を指摘された.CTで左腎由来の16㎝大の腫瘤性病変と両側肺転移を認め,生検で腎明細胞肉腫Stage4と診断した.初診時に骨シンチグラフィで異常集積はなかった.JWiTSプロトコールRegimenⅠに準拠し術前化学療法を施行し,原発巣と肺転移巣の縮小を確認し,開腹腫瘍摘出術を施行した.術後放射線療法とRegimen Iを継続し,肺転移巣の縮小を認めたが,CTで新たに椎体・腸骨・大腿骨に骨硬化像を認めた.骨シンチグラフィでも椎体に異常集積を認めた.新規骨転移の出現が疑われたが,肺転移巣は縮小しており,フレア現象と考え化学療法を継続した.7週間後,骨シンチグラフィの椎体への異常集積は改善し,フレア現象であったと判断した.骨転移を伴う癌の治療中に治療が奏功すると,骨シンチグラフィで一過性に集積亢進を示すことがありフレア現象と呼ぶ.新規骨病変を認めた際には,他部位の治療反応性,経過と合わせて判断することが肝要である.

  • 中原 康雄, 高橋 雄介, 橋本 晋太朗, 大倉 隆宏, 石橋 脩一, 浮田 明見
    2022 年 59 巻 2 号 p. 197-201
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    神経芽腫Stage 4S症例は大半が予後良好ではあるが,まれに肝病変が増大し,全身管理に難渋する場合がある.症例は2か月の神経芽腫stage 4Sの女児である.初診時より,下腿浮腫,呼吸障害などの腹部コンパートメント症状および凝固異常を認め,肝病変生検後に腹部に1.5 Gy,3日間の放射線照射を行った.腫瘍崩壊と腹部コンパートメント症候群が合わさり,照射3日目には呼吸不全,腎不全の状態となった.そのためECMO(Extracorporeal membrane oxygenation)およびCHDF(Continuous hemodiafiltration)を導入した.放射線照射の効果により,腹部コンパートメント症候群を脱するまでの,急性期を管理することで,呼吸循環は改善し,まずECMOから離脱でき,腎機能の回復を待ってCHDFからも離脱できた.Stage 4Sのコンパートメント症候群に対し放射線照射は効果的であり,呼吸不全を生じた場合には,時期を逸することのないECMOの導入が,救命のための治療選択肢になりうると考えられた.

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