日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
経過中にECMOを要したStage 4S神経芽腫の1例
中原 康雄高橋 雄介橋本 晋太朗大倉 隆宏石橋 脩一浮田 明見
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2022 年 59 巻 2 号 p. 197-201

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抄録

神経芽腫Stage 4S症例は大半が予後良好ではあるが,まれに肝病変が増大し,全身管理に難渋する場合がある.症例は2か月の神経芽腫stage 4Sの女児である.初診時より,下腿浮腫,呼吸障害などの腹部コンパートメント症状および凝固異常を認め,肝病変生検後に腹部に1.5 Gy,3日間の放射線照射を行った.腫瘍崩壊と腹部コンパートメント症候群が合わさり,照射3日目には呼吸不全,腎不全の状態となった.そのためECMO(Extracorporeal membrane oxygenation)およびCHDF(Continuous hemodiafiltration)を導入した.放射線照射の効果により,腹部コンパートメント症候群を脱するまでの,急性期を管理することで,呼吸循環は改善し,まずECMOから離脱でき,腎機能の回復を待ってCHDFからも離脱できた.Stage 4Sのコンパートメント症候群に対し放射線照射は効果的であり,呼吸不全を生じた場合には,時期を逸することのないECMOの導入が,救命のための治療選択肢になりうると考えられた.

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© 2022 日本小児血液・がん学会
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