日本小児血液・がん学会雑誌
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教育セッション4:輸血
小児がん患者の輸血療法の適応と課題
岩本 彰太郎
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2022 年 59 巻 3 号 p. 239-247

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抄録

小児がん患者の診療において,輸血療法は重要な支持療法の一つである.しかしながら,本邦では明確な輸血適応基準が定められていないのが現状である.諸外国の小児輸血ガイドラインにおけるがん患者への輸血適応は,赤血球輸血ではヘモグロビン値7~8 g/dL,血小板輸血では出血予防を基本とし血小板数1~2万/μLとしている.これらも十分な科学的根拠に基づいているとはいえないものの,本邦の多くの施設はこれらを参考にしている.一方で,こうした指標に捕らわれすぎることなく,血液製剤の安全性を考慮しながら,子どもの状態像に応じて判断せざるを得ない症例も存在する.

特に,根治困難と判断され小児がん患者の終末期における輸血療法に関しては,依然議論の多いところである.白血病などの造血器腫瘍患者にとって,輸血療法は終末期の生活の質を維持するために不可欠であるが,在宅療養を希望する子どもにおいて在宅移行の障壁の一つにもなっている.輸血療法は,どのような状況においても安全に施行されることが重要であるが,これまでに本邦における終末期小児がん患者に対する在宅輸血の適応や安全な実施体制についてまとまった報告はない.今回,小児の輸血療法の現状と副作用および小児がん患者に対する輸血適応について整理するとともに,終末期小児がん患者の在宅輸血の適応と課題について考察する.

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© 2022 日本小児血液・がん学会
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