2022 年 59 巻 5 号 p. 413-419
本研究の目的は復学に際した学校側への情報提供の内容・対象とその理由を小児がん経験者の保護者の視点から明らかにすることである.2021年1~5月に小児がん経験者の保護者を対象とし,ウェブアンケートまたは質問紙を用いて復学時の情報提供の内容・対象とその理由に関する調査を行った.16名の小児がん経験者の保護者から有効回答が得られた.13名が母親であり,6名が急性リンパ性白血病の経験者の保護者であった.保護者は,疾患や治療,遅刻・早退・欠席について「病気をオープンにしてよいと考えた」ためや「本人に関わる全ての人からの理解・配慮を得たかった」ために,教員だけでなく同級生へも伝えていた.また学習の遅れについて「本人が同級生と同じようにできなかった」ためや「マンツーマンの指導が必要であった」ために教員以外の同級生や家庭教師等に伝えていた.授業や体育での困難や配慮の希望については「教員との良好な関係があった」ためや「復学前に復学に向けた話し合いができた」ために教員へ伝えていた.また学校生活上の困難や配慮について「それに伴う教員や同級生の戸惑いを解消する」ために同級生へ伝えていた.進路や進学の希望について「小児がん経験者の将来をイメージすることが難しい」場合,誰にも伝えていなかった.本研究の知見は情報提供の内容やその対象を決定するプロセスを医療関係者・教育関係者が支援する上での参考になると考えられる.