2022 年 59 巻 5 号 p. 407-412
〈背景〉新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は小児がん患者において重症化する可能性がある.また院内クラスターが発生した場合,感染拡大や医療の崩壊につながるため,厳密な感染対策を要する.我々は小児がん病棟スタッフのCOVID-19発症を契機に厳密な感染対策を行ったため,その経験を報告する.
〈結果〉2021年3月某日,看護師の1人がCOVID-19を発症した.直ちに病棟内の全ての入院患者18人とスタッフ39人のSARS-CoV-2 PCR検査を実施し,陰性を確認した.病棟入院患者と病棟スタッフを曝露リスクごとに分類し,患者をゾーニング,自室内隔離した.家族面会は禁止し,ビデオ通話によるweb面会を導入した.1人の患者は治療を延期したが,それ以外の患者は予定通りの治療を継続し,病状や心理面に大きな影響は見られなかった.患者家族には強い不安が見られた.病棟看護師は8人が高・中リスクのため就業制限となり,業務が増加したことで混乱し疲弊した.2次発症例はなく2週間後に全ての制限を解除した.
〈結語〉感染対策によって通常の診療を継続でき,患者の病状や心理面には明らかな影響はなかった.一方で患者家族には強いストレスが見られ,スタッフは疲弊した.可能な限り面会を維持すること,対策内容を事前に決めて周知しておくこと,スタッフがCOVID-19患者や接触者にならないよう注意することが重要である.