日本小児血液・がん学会雑誌
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JSPHO&JCCG特別企画 ジョイントシンポジウム:小児血液・がん領域の臨床研究の進め方
血栓止血“マニア”が解読する小児がん治療で遭遇する凝固関連合併症~血栓症? それとも出血症状?~
石原 卓野上 恵嗣
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2023 年 60 巻 2 号 p. 113-119

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抄録

凝固/線溶能の関係性は,凝固優位であれば血栓症を,逆であれば出血症状を呈する.すなわち,両者のバランスが重要である.小児がん治療で遭遇する凝固障害と言えば,類洞閉塞症候群(SOS),血栓性微小血管症(TMA)などが挙げられるが,病態は未解明な面も多い.そこで凝固/線溶能のバランスが病態解明の糸口になるのではないかという視点から,包括的な凝固能と線溶能を同時に測定できるトロンビン・プラスミン生成試験(T/P-GA)を新たに確立した.SOSでは発症直前からトロンビン生成とプラスミン生成(PG)の同時低下が見られ,凝固能および線溶能ともに低下することを確認した.造血細胞移植関連TMAでも同様で,さらに病態の回復期には凝固/線溶能も回復していた.また小児固形腫瘍の遠隔転移例ではPGが増加し,転移と線溶との関連性が示唆された.急性リンパ性白血病では,L-asparaginase投与相でPGの低下が顕著となり寛解導入療法後半に相対的な凝固優位状態になることを見出した.また成人悪性リンパ腫の遺伝子改変キメラ抗原受容体T細胞療法におけるサイトカイン放出症候群の凝固障害では線溶抑制因子total plasminogen activator inhibitor-1が増加することが報告され,新規の免疫療法においてもT/P-GAによる病態解析が待たれる.凝固/線溶能のバランスに基づいた様々な凝固障害に対する病態解析を行うことにより安全で効果的ながん治療の確立の一助になることが期待される.

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© 2023 日本小児血液・がん学会
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