2023 年 60 巻 2 号 p. 120-124
【背景】TCF3::HLF陽性急性リンパ性白血病(ALL)は化学療法抵抗性を獲得しやすく,難治性であることが知られている.一方で,同種造血細胞移植(allo-HCT)による移植片対白血病(GVL)効果の有効性が示唆されているほか,近年ではブリナツモマブによる橋渡し後のallo-HCTで長期寛解が得られたとの報告がなされている.【症例】13歳女子.皮下出血を主訴として受診し,TCF3::HLF陽性ALLと診断した.腫瘍崩壊とともに高カルシウム血症と播種性血管内凝固が増悪したが,全身管理を行いながら寛解導入療法を行い微小残存病変(MRD)が10–4未満となった.強化療法としてブリナツモマブを1コース投与しMRDが陰性となった後に,HLA 5/8アリル適合の父をドナーとして骨髄移植を行った.前処置は全身放射線照射12 Gyとエトポシド1.8 g/m2で,GVHD予防は移植後シクロホスファミド(PTCy)法を行った.閉塞性細気管支炎に対する治療を継続しているが,移植後2年以上無病生存している.【考察】PTCy法は成人ALLに対するHLA半合致移植後の再発リスクを上げないなど,GVL効果を損なわない可能性が報告されている.深い寛解を得るためにブリナツモマブで橋渡しした後にPTCy法によるHLA半合致移植を行うことはTCF3::HLF陽性ALLに対する有効な戦略であると考えた.