日本小児血液・がん学会雑誌
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教育セッション3:急性骨髄性白血病
小児の急性骨髄性白血病:リスク層別化治療の発展
富澤 大輔
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2023 年 60 巻 2 号 p. 130-138

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抄録

リスク層別化は,個々の患者に適切な強度の治療を割り付けるために必要であり,その発展は小児急性骨髄性白血病(AML)の治療成績向上に大きく寄与してきた.正常細胞,白血病細胞ともに殺細胞性抗がん剤への感受性が高いダウン症候群関連骨髄性白血病(ML-DS)に対する強度減弱型化学療法の適用はその一例である.ML-DSおよび急性前骨髄球性白血病(APL)を除いたde novo AMLのリスク層別化には,白血病固有の細胞遺伝学的異常および微小残存病変(MRD)測定による初期治療反応性評価が重要であり,主として高リスク群を抽出して同種造血細胞移植適応の決定に用いられてきた.また,近年の分子生物学的あるいは遺伝子解析技術の進歩によってAMLの分子機構が次々と明らかになる中,リスク層別化には適切な治療標的分子を同定することで,急速に開発が進む分子標的治療の適用につなげる側面もあり,近年重視されつつある.APLに対するATRAや三酸化ヒ素を用いた分化誘導療法はその成功例である.近い将来,わが国ではAMLを含めた造血器腫瘍の遺伝子パネル検査が保険診療に実装される見込みであり,小児AMLのリスク層別化治療のさらなる発展が見込まれる.その一方で,特に小児を対象とした新規分子標的薬の開発は欧米と比較して遅れをとっており,今後の大きな課題であるとともに,その解決に向けた取り組みが求められている.

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© 2023 日本小児血液・がん学会
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