2023 年 60 巻 2 号 p. 139-142
私の息子は2020年に6才でラブドイド腫瘍の再発により旅立っていった.再発時に分子標的薬を用いた治療を選択したが,海外で実施されている国際共同治験は国内で実施されておらず,国内の別の分子標的薬の治験に参加したものの,経口の剤形が問題となって治験参加が遅れ,治験開始からわずか4日で腫瘍が増悪し中止となり,約1ヶ月後に旅立っていった.
必ずしも分子標的薬が奏効するわけではないものの,日本では新たに開発された小児がんに効果がある分子標的薬へのアクセスに問題があり,海外の状況と比較してドラッグ・ラグが発生しており,また今後ドラッグ・ロスとなりかねない状況となっていて治療の選択肢が狭まっている.本報告では息子もその状況に苦しんだことを記す.本事例以外においても多数の苦しむ小児がんの患者がいることや様々な問題点があることは本シンポジウムにて小川や植木が報告しているとおりで,抜本的な制度改革が必要である.またその検討においては今まさに困難に直面し,薬剤へのアクセスが早急に必要な患者がいることから短期的目線(未承認薬の使用)と長期的目線(薬剤の小児向け開発促進と国内承認)の両面での検討が必要であることを申し添える.