日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
わが国の小児白血病における腫瘍崩壊症候群への対応の現状
嘉数 真理子大曽根 眞也篠田 邦大矢野 道広佐野 弘純新小田 雄一森 尚子加藤 陽子足立 壯一福島 啓太郎
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2023 年 60 巻 2 号 p. 143-148

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抄録

背景:小児白血病の治療において腫瘍崩壊症候群(TLS)は致死的になりうる合併症である.2016年の日本小児血液・がん学会の診療ガイドラインでTLSの標準的治療が示され,尿酸分解酵素製剤であるラスブリカーゼの使用を前提に尿アルカリ化を推奨しないことが記されたが,本邦のTLSへの対応の現状は不明である.そこで当時のJPLSG参加施設を対象として調査を行った.

方法:2016年2月~6月に,155施設の実務担当者に対してSurveyMonkey®を利用したweb調査を行った.

結果: 99施設(64%)から有効な回答を得た.寛解導入療法開始時に54%の施設が尿アルカリ化を行っており,新規造血器腫瘍患者数が年間5人以下の施設では67%が行っていた.尿酸生成阻害薬については,予防的に使用している施設が全体の75%を占めた.TLSの治療としてラスブリカーゼはほとんどの施設で使用され,平均継続投与日数は5.4日であった.ラスブリカーゼの再投与は45%で経験があり,副作用の報告はなかったものの,初回投与から再投与までの期間は調査できていなかった.

考察:TLSの予防や治療としてラスブリカーゼが広く普及している一方,54%の施設が尿アルカリ化を行うと回答していた.ラスブリカーゼ時代のTLSに対する適切な管理が,小児がんを診療する施設全体で行われる必要がある.

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© 2023 日本小児血液・がん学会
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