2023 年 60 巻 2 号 p. 149-155
背景:小児がんサバイバー(以下CCSs)は,晩期合併症のリスクを踏まえたヘルスプロモーションを意識する必要があるが,その一部を構成するヘルスリテラシー(以下HL)についてCCSsの報告はなく,研究に着手した.
方法:対象者は1976年10月~2018年3月までに筑波大学附属病院小児科,小児外科,脳神経外科,放射線腫瘍科で小児がん治療を受けた15歳以下の患者で,調査時年齢が16歳以上の者とした.郵送での自記式質問紙調査で,基本情報とHLS-EU-Q47日本語版への回答を依頼した.分析は,対象者のHLスコアを算出し,個人属性,診断名,診断時年齢との関連を解析し,HL困難度は,健常人との比較を行った.結果:249人中54人から有効回答の返信があり(回収率21.6%),CCSsは健常人と比較し,全属性でHLが高い結果だった.とりわけ診断時年齢が0~4歳,学歴が専門学校卒,職業が学生の群のHLが高く,診断時年齢が15歳以上の群が低い結果だったが,全て有意差はなかった.HL困難度は,健常人よりも低い結果で,CCSsの困難度が高いものは,セカンドオピニオンの必要性やメディアから得た健康リスクや病気に関する情報の信頼性を判断することだった.考察・結論:CCSsのHLに影響を与える要因として様々なものが考えられたが,具体的な示唆は得られなかった.一方で様々な課題が多いCCSsだが,HLが健常人と同等かそれ以上であるという今回の結果は,闘病に伴う一連の体験が健康意識を高めている可能性が示唆された.