2023 年 60 巻 3 号 p. 237-240
小児の腹部・骨盤部に発生する腫瘍は横紋筋肉腫,ユーイング肉腫,神経芽腫など放射線治療が有効な組織型が多く,集学的治療の一環として放射線治療が用いられる.近年,従来のX線治療と比べて線量集中性のよい陽子線治療が注目されており,放射線障害の軽減が期待されているが,消化管や腎などのリスク臓器が腫瘍と接している場合は,陽子線治療をもってしても腫瘍全体へ十分な線量を照射するのは難しい.そういった場合に,開腹下に腫瘍とリスク臓器の間にスペーサーを留置して,距離を作れば,腫瘍線量をかなり上げることができる.また,小児の臓器は成長段階にあり,放射線感受性が高いため,耐容線量が成人と比べて低く,さらに,耐容線量以下の被曝であっても成長障害につながる可能性があり,ALARA(as low as reasonably achievable)を目指す必要がある.
従来の非吸収性スペーサーの問題点を解決した吸収性スペーサーが開発され,治験を経て,2019年6月に上市(ネスキープ®),同年12月にスペーサー留置術と共に保険収載された.小児はがん治癒後の人生が成人より長いため,特に吸収性スペーサーが有用である.非吸収性の場合,一生体内に残り続け,臓器の機能や成長の障害につながったり,感染源になったりする可能性がある.抜去が行われることもあるが,再手術による患児の負担増という問題がある.