研究助成機関が資金提供を行うプロジェクトからは,多様な研究成果が産出される.科学研究費助成事業(科研費)で助成対象者が提出する報告書では,研究成果を雑誌論文,学会発表,図書,産業財産権に分類して記述する.オープンサイエンスの潮流の中,いずれにも該当しない研究成果が多く産出されており,プレプリントを雑誌論文として挙げる等枠組みを超えて研究成果が報告されている.本稿は,科研費の研究成果のリソース種別を参照することで,研究成果の多様性の変化と現状を明らかにする.調査の結果,海外の助成機関と比較すると科研費の研究成果の多様性は低いが,増加傾向にあることが観察された. また,大型の研究種目ほど,多様な研究成果が産出されていることが判明した.一方,若手研究者向けの研究種目では,プレプリントの割合が高いことが示された.これらから,日本でも多様な研究成果の評価に対する要望は高くなっていると考えられる.