日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
Print ISSN : 2187-011X
ISSN-L : 2187-011X
総説
本邦における小児がん医薬品開発の現状と課題
富澤 大輔小川 千登世
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 60 巻 3 号 p. 253-259

詳細
抄録

小児がんの長期生存率は約80%に達するが,いまだがんは小児期の病死原因第1位である.特に小児固有のがん種が多くを占める固形腫瘍では,海外標準治療薬のドラッグラグが長く,予後に影響している.2003年に成人対象に開発された医薬品の小児開発を義務づける法制度を整備した米国では,2017年にResearch to Accelerate Cures and Equity (RACE) for Children Actを法制化し,成人のがん分子標的薬でも共通する標的分子をもつ小児のがんに対する開発を義務化した.その結果,小児がんの分子標的薬の開発が飛躍的に加速し,造血器腫瘍領域の一部で改善しつつあった日米のドラッグラグは再び拡大している.わが国の小児がんに対する医薬品開発が進まない原因には,①市場規模が小さく,企業の開発コストや法的義務(安定的供給や安全性監視活動など)の負担が大きいこと,②第I相試験や小児治験に精通した医療機関・人材が不足していること,③医師主導治験に対する公的予算が少なく,研究費の確保が困難であること,④対象患者が少なく,被験者確保が難しいこと,などがあげられる.既存の政策が小児がんにおける薬剤開発促進につながる有効な打ち手となっておらず,小児がんドラッグラグの解消には抜本的な制度改革が必要である.さらに,保険適用までの間の小児がん患者の医薬品アクセス方法についても検討が必要である.

著者関連情報
© 2023 日本小児血液・がん学会
前の記事 次の記事
feedback
Top