日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム6:小児固形腫瘍における基礎・トランスレーショナル研究の現状と展望
神経芽腫における基礎・トランスレーショナル研究の現状と展望
上條 岳彦
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2023 年 60 巻 5 号 p. 320-325

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抄録

神経芽腫の高リスク群(発症時の高年齢,遠隔転移例,MYCN増幅,テロメア異常,再発例)の予後は未だに不良であり,1980年代以降新たに神経芽腫治療法として臨床に取り入れられたのは抗GD2抗体のみである.神経芽腫高リスク群に対する分子標的療法,免疫治療法,放射線治療法などの新規の治療法の開発が待たれている状況である.本講演では特に神経芽腫予後不良バイオマーカー分子の同定の現状とこれらに対する標的療法の開発の現状を紹介する.注目されている神経芽腫予後不良バイオマーカーとこれらを標的とした治療法開発としては,1.テロメア異常:TERT,ATRX変異(ATM阻害剤),2.Epigenome異常(EZH1/2阻害剤),3.MYCN増幅(BRD阻害剤,BET阻害剤,ODC1阻害剤,MYCN分解促進:PROTAC),4.ALK変異・増幅(ALK阻害剤)5.Cell Cycle経路異常(CDK4/6阻害剤),6.RAS/RAF/MAPK経路異常(MEK阻害剤),7.ATM/ATR/ARF/MDM2/p53経路(CHK1阻害剤,MDM2阻害剤)などがあり,これらの分子機構と薬剤開発・臨床試験の現状をレビューする.

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© 2023 日本小児血液・がん学会
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