2023 年 60 巻 5 号 p. 326-331
小児急性骨髄性白血病(AML)の治療成績はゲノム解析と治療反応性に基づいたリスク層別化治療により改善を認めている.近年,新たなゲノム解析技術の進歩により予後予測に有用と考えられるゲノム異常が相次いで報告されている.例えば,予後良好とされているRUNX1::RUNX1T1陽性AMLではKIT変異の有無が有用な予後予測マーカーとなりうることや,小児AMLで頻度が高いKMT2A遺伝子再構成のあるAMLは,KMT2A遺伝子の融合パートナーの種類により予後が異なることが報告されている.また,小児AMLの代表的な急性巨核芽球性白血病の解析では,CBFA2T3::GLIS2, NUP98::KDM5A, KMT2A再構成など様々なゲノム異常が同定されこれらの有無が予後と密接にかかわることが示されている.最近では,RNAシークエンスの遺伝子発現解析により,17遺伝子の発現レベルに基づいたLSC17スコアやpLSC6スコアなどの予後予測モデルや,シングルセル解析による細胞分画に基づいた予後予測が試みされている.今後は,このように新たに同定されたゲノム異常や予後予測モデルと治療反応性を組み合わせた新たなリスク層別化の開発が進み,さらに精密な予後予測に基づいた治療開発が実現されることが期待される.