2023 年 60 巻 5 号 p. 312-319
肉腫研究における診断法開発という観点からの大きなマイルストンは,1980年代の腫瘍特異的融合遺伝子の発見である.以降,各組織型における特異的融合遺伝子が現在まで多数同定され続けており,その都度新しい疾患概念が生まれている.組織に基づく分子診断法は発展する一方,肉腫には血中腫瘍マーカーが極めて少ない.近年,血液中の核酸・細胞外小胞などの循環分子を用いたリキッドバイオプシーの開発が試みられている.血中cell-free microRNAを用いた方法は横紋筋肉腫におけるMiyachiらによる報告に端を発している.ctDNA解析は2021年8月より保険収載され,今後の知見の集積が待たれる.治療法開発における進歩は,パゾパニブ,エリブリン,トラベクテジンが進行性軟部肉腫に対して保険収載された一方,進行性骨肉腫・Ewing肉腫に対しては新たな分子標的薬は登場しておらず治療開発が待たれる.近年,がん遺伝子プロファイリング検査を用いた特定の遺伝子異常を標的とする治療法の適応拡大が肉腫においても新たな光明をもたらしつつある.免疫チェックポイント阻害剤は肉腫において有効性が低いことが明らかにされつつあり,他の腫瘍微小環境構成細胞を標的とする方法も試みられている.本稿では,このような骨軟部肉腫における基礎・トランスレーショナル研究の現状について概説する.